TUGUMI

「TUGUMI」

 吉本ばなな

 中央公論社

 

ある図書館で,「よしもとばななの小説をテーマにビブリオバトルがある」と友人が教えてくれたので,面白そうだから出場してみようかなと思い,ちょうど手元にあった「TUGUMI」を再読しました。

「キッチン」の台所で毛布にくるまって眠っている主人公のイメージは,とても印象的に頭に残っていて,私も「台所で寝ようかな」なんて考える時もあることだし,まずは「キッチン」を再読しようと試みたのですが,イケメンの登場でなぜか躊躇してしまい,読み進めることができませんでした。

その次に手に取ったのが「TUGUMI」…よしもとばなな(正確に言うと吉本ばなな時代の作品ですが)は純文学者だなあとつくづく思いました。表現の一つ一つがとても美しく,ビューポイントがたくさんあって,そこかしこでシャッターを切りたくなるような気がします。

山本容子による装丁デザインも女子の心をくすぐります。

初めて読んだのはちょうど私が主な登場人物たちと同じ年ごろだったためか,物語に共感し感動したのですが,おばさんになってしまった私は素直に物語に入っていくことができなくて,そんな自分にがっかりしました。

まっすぐで生き生きとしている登場人物やそれを素直に受け入れることのできた当時の自分に嫉妬してしまったようです。ひねくれ者のおばさんはたちが悪いですね。ビブリオバトル出場はあきらめました。

姪っ子が当時の私と同じお年ごろなので,「カッテニカケハシ」してみたいなとおもいます。携帯電話がまだ普及していなかった頃の物語に,はたして彼女は共感するのでしょうか?