「横浜黄金町パフィー通り」
阿川大樹
徳間書店
黄金町は10年ほど前まで、行ってはいけない危ない街だったらしいのですが、その危ない時代を私は知りません。
でも、今黄金町へ行くと、その危ない時代の痕跡がまだ残っているので、容易に想像できます。
そして、そんな黄金町を訪れるたびに「危なっかしい街だなあ」と感じます。それは、黄金町一帯が,どうも「街」と言うよりも、一つの建築物のように思えてならないからです。
その中に入るモノによって、いくらでもイメージは変わるし、そのなかに入るモノは、必ずしも「そこになくてはならないもの」ではないし、古びたら、飽きてしまったら、時代が変わったらいつでも取り壊してしまえると言う危うさです。
黄金町はアートを入れ込んで町おこしをはかろうとしていますが、単なるギャラリーとしての街ではなく、もっと農業的な「土壌」としての街をつくるべきではないかなあと思います。
この小説、女子高校生の視点から描かれているのですが、今まで黄金町に何度も訪れた事があるものの、一度も高校生に出会った事がありません。時々、「これってノンフィクションでは?」と思う箇所があるのですが,視点が女子高校生と言う点で、ぎりぎりフィクションのラインを守っているような気がします。そしてまた、これは黄金町の住民でもある作者の優しい心遣いだと感じます。
若者の間でドラマや小説の「聖地巡礼」なる行動が流行っているそうなので、この小説を読んで、黄金町に訪れる人が増えると良いなあと思います。