ストラング先生の謎解き講義

 

『ストラング先生の謎解き講義』

 

 ウィリアム・ブリテン

 

【次の文章のカタカナの部分を漢字に変換しなさい。「ショウテンが50周年を迎えた」】という問題を出されて「商店」と答える日本人はきっと少ないだろうと思います。50周年を迎えた長寿テレビ番組『笑点』の司会者が引退するにあたっては、「誰が次の司会者になるのか」の予想でにぎわっていたようです。
50年も続いた理由の一つは「変わらないこと」だと思います。構成も、出演者のキャラクターも、少しづつリニューアルはあるものの、大きな枠でとらえると変わらないものは、何となく見ていて安心するのですよね。時代劇の類もそういう理由で好かれているのだと思います。
さて、この『ストラング先生の謎解き講義』も、探偵ミステリーなのでドキドキわくわくするのですが、一方、ストラング先生が解決してくれるという「変わらない安心感」が感じられる作品です。別の作家の作品へのオマージュもあり、短い話の中だけで終わらない、広がりを感じることができる楽しい仕掛けもあります。
この短編集を読んでいて、大好きだったテレビドラマ『刑事コロンボ』が思い出されました。ちょうどアメリカで制作放映された時期と出版時期が同じころなので、「さえない主人公が難事件を解決する」というスタイルがアメリカで当時流行っていたか、もしくはどちらかの作者が他方の作品から影響を受けたのではないかなあと思いました。
話は最初に戻りますが、次なる司会者を予想できた人はきっと少なかったのではと思います。予想を裏切る司会者の起用は、50年目の大掛かりなリニューアルなのでしょうか?それとも、100周年に向けた「変わらないこと」を続けるための第一歩なのでしょうか?