カレジの決断  &  アーミッシュに生まれてよかった

『カレジの決断』          『アーミッシュに生まれてよかった』

    偕成社                         評論社

 あるイベントの絡みで,「接続と孤立」でホンバタカイギを開いて欲しいとのリクエストがありました。あまり予備知識がない状態で「接続と孤立」について考えたとき,一番に思い浮かんだのは核となるコミュニティーでした。そして,独特のコミュニティーとしていちばんに思い浮かんだのが「アーミッシュ」でした。
そこで,アーミッシュについて書かれた本で,できればあまり小難しくないものをと探したところ,この2冊の児童書にたどり着いたというわけです。
ふたつの物語の主人公はどちらもアーミッシュの村で暮らす女の子です。そして,一つの物語の中の主人公はアーミッシュの村を出て暮らすことを選び,もう一方の物語の中の主人公はアーミッシュとして立派に暮らしていこうと心に誓います。
書名を見ればどっちがどっちか,すぐにお分かりになるかと思います。
アーミッシュは完全に閉じた世界と思いきや,意外と外の世界との接点もあるようです。物語の中でも。外の世界の人に多大なる影響を受けて,二人の主人公はアーミッシュとして生きていくことが自分にとってよいことなのか葛藤します。
その葛藤は,何もアーミッシュの世界に限らず,思春期を迎えたものには誰でも心に持つものだなと思いました。ただ一つ違うのは,一度コミュニティーを離れたものは,二度とのその敷居を跨げないどころか,気軽に手紙のやり取りをすることさえ許されないということです。
それは,本人と家族との関係云々の話を超えて,コミュニティーを守るためだからです。そこにはコミュニティーの原点である宗教の強い教えがあるからこそではないでしょうか。
「強く信じていさえすれば,そこには迷いも何も生まれない。全ては神にゆだねればよい。」という考え方が,時には不幸を生むことになるような気がしますが,余計な人生の選択に心を揺るがせ,傷つき疲れてしまうぐらいなら,何も考えずに生きていく方が,幸せな時もあるのかもしれないなあと思いました。