『百年法』上・下
山田宗樹 著
角川文庫
テレビを観ていると、番組だけでなくコマーシャルも目にはいってくるわけですが、シミ・しわを隠す化粧品だの、関節の痛みを抑えたり老眼を改善したりするサプリメントだのの宣伝が目につくのは、永遠の若さと健康を手に入れたいという私の欲望のあらわれでしょうか。
多くの人がきっと、叶えられないとわかっていながらも、一度は夢見たであろう「不老不死」…『百年法』は、不老不死が実現した日本が舞台の小説です。
読んでいる途中、「おごれる者は久しからず」というフレーズが何度も頭の中をよぎるのですが、そんな当たり前の展開には収まらず、あっと驚くようなストーリーが続いて行くので、長編小説にもかかわらず一気に読みたくなります。
これはSF小説と言えるのかなと思いましたが、2013年に日本推理作家協会賞を受賞しているそうなので、ミステリー小説ともいえるのでしょうか。
山田氏の創作の基本は「いかに読者に楽しんでもらうか」といえるだけあって、読み応えのあるエンターテイメント小説であることは間違いありません。
年齢、立場、思想によって、読み終わったあとの意見が、様々に分かれることが予想されますので、「ホンバタカイギ」に囲みたい小説です。
山田氏が、社会的弱者を描くとどんなストーリーが生まれるのか、興味が湧きました。